リーダーシップ
福島発のイノベーションを先導し、次なる時代を創るリーダーたちの想いに迫ります
鈴木真二氏(福島ロボットテストフィールド所長)×曽谷英司氏(イームズロボティクス株式会社代表取締役)
ドローン“レベル4飛行”が拓く新たな未来を福島から世界へ
2023年06月05日
鈴木 真二さん
福島ロボットテストフィールド所長
東京大学名誉教授・東京大学未来ビジョン研究センター特任教授。
工学博士(東京大学、1986年)。
国内におけるドローン研究の第一人者。
専門は、航空機力学、無人航空機、航空イノベーションなど。
曽谷 英司さん
イームズロボティクス株式会社 代表取締役
日立製作所系列のシステム会社にて、金融業界への営業を一貫して30年担当。
その後、2015年に、新規事業としてロボット事業を立ち上げ責任者として着任し、ドローンビジネスへ参画。
主な実績として、ドローンの海外サービサーとのアライアンス締結、海外における橋梁点検の受注、国内での点検測量を中心とした100件を超えるサービス受注があり、国内外でのアライアンス締結から、ドローンのビジネス化まで幅広い経験を有している。
また自社サービスやドローンに関する100回を超えるセミナー・講演の実施や、ドローンの産業活用に関する執筆活動の実績がある。
2022年12月5日に改正航空法が施行され、ドローンの有人地帯での目視外飛行(レベル4飛行)が可能になりました。
レベル4飛行の実現でどんな未来が拓かれるのか。解決すべき課題は何か。
そして福島県だからこそできることは何か。
新制度設計に大きく貢献した福島ロボットフィールド(RTF)の鈴木真二所長と、南相馬市に本社を置く老舗ドローンメーカー・イームズロボティクス株式会社の曽谷英司社長にお話しいただきました。
ドローンを活用した物流の実証実験を実施中
曽谷:
弊社は、国産ドローンメーカーの中で最も古い会社の一つです。
ドローンでできることは一通り手掛けており、特に点検、物流、警備分野を主力マーケットとして事業展開しています。2021年4月に福島市から南相馬市に本社を移転しました。RTFまで車で約20分なので、ドローンの開発や検証を行うには日本で一番いい場所だと思っています。
レベル4飛行解禁で、今後は物流分野でのドローン利用が増えると考えています。弊社は第一種型式認証習得に向けて機体の開発を進めるとともに、佐川急便などと共同で東京都による物流の実証実験を青梅市で行っています。
鈴木:
RTFはこれまでもイームズロボティクスと連携して、ドローン社会実装に向けてさまざまな活動をしてきました。また私個人としても、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトで、ドローンにAIを搭載するための研究開発をイームズロボティクスと一緒に進めています。常に新しい技術にチャレンジする会社であり、非常に頼もしく思っています。
レベル4飛行を可能にした新制度の整備には、RTFが深く関わりました。具体的な取り組みは3つです。まず機体検討ワーキングに参加し、さまざまな提言や要望を行いました。
また、機体認証制度開始に向けて性能評価手法をNEDOのDRESSプロジェクトで検討したほか、事業者がドローンを安全に活用するためのガイドラインを作成しました。
福島の海岸沿いをレベル4飛行の試験地域に
曽谷:
レベル4飛行の解禁によって物流、点検、警備、災害分野でマーケットが大きく拡大すると期待しています。特にニーズが高いのが物流分野です。消費者の玄関先まで商品を届ける“ラストワンマイル”にドローンが活用されることになるでしょう。
我々メーカーとしては安全性の高い第一種型式認証を取得する必要がありますが、どこまで信頼性を上げるかなど、まだ明確になっていない部分も多く、現在、国土交通省とディスカッションをしているところです。我々が先行して事例をつくり、業界全体に貢献できればと考えています。
鈴木:
人口密度の高い場所を飛ぶドローンにはどのような安全性が求められ、どう信頼性を証明するか、今後考えていく必要があります。AI搭載などの新しい技術の使用を促進する制度の検討や、ドローンの運行管理などのインフラ整備も欠かせません。検討や実証実験を行うフィールドとして、今後ますますRTFの役割が重要になると感じています。
RTFは現在、事業者の管理体制の指標である“ドローンサービスJIS”の原案を作成しています。
今後は認証取得ガイドブックの作成などを通し、事業者を支援する予定です。
曽谷:
RTFは、世界でも類を見ない素晴らしい施設です。RTFを中心にドローンの利活用が進むことを期待しています。
レベル4飛行の実現には、目視外の長距離飛行試験ができる場所が必要です。RTFから浪江滑走路までの海岸沿いを自由にテストできるエリアにしてほしいと、国土交通省や復興庁などに働きかけているところです。ゆくゆくはRTFとふくしまスカイパークや福島空港、仙台空港を結び、ドローンや空飛ぶクルマが自由に飛べるエリアにする。
そんな環境つくり、RTFを中心に南相馬市、福島県がドローン開発の最先端地域になるよう、我々も南相馬のドローンメーカーとして全面的に協力したいと考えています。
鈴木:
福島県の海岸沿いがドローンの新しい使い方の開発拠点となり、日本全体、そして世界に広がっていく。ぜひRTFがその拠点となれるように取り組んでいきたいですね。
(本稿は2023年1月の取材に基づくものです。)
イームズロボティクス株式会社
イームズロボティクスは、エンジニアのための自律歩行をするロボットやシステムの開発が基本理念。ドローン(UAV)以外にもボート、無人地上車両(UGV)などの開発を手がけており、陸海空に亘る自律システムを作っていてる。
ニーズに合わせたカスタマイズを考え、実現するためにどんなカスタマイズが必要か、また、どんな部品と技術が必要かを提案するのがイームズの特徴。開発から製造、アフターサービスまでを一気通貫してお客様へ提供する。