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地元大学生とイノベーション企業の出会いを創出。
福島ロボットテストフィールドで企業見学バスツアーを開催

2020年11月13日

2020年9月29日、福島県会津若松市にあるコンピュータ理工学専門の公立大学である会津大学の学生13名が企業見学バスツアーに参加。「福島ロボットテストフィールド」の見学や、福島を代表するイノベーション企業3社による開発技術のデモンストレーションなどが行われました。学生にとっては地元で活躍する企業を知るまたとない機会となり、企業にとっては学生に自社をPRすることができ、お互いにとって有意義な出会いの場となりました。

会津大学からバスに乗り、参加する学生たち


東日本大震災からおよそ10年がたち、「福島イノベーション・コースト構想(以下、福島イノベ構想)」に基づき整備された「福島ロボットテストフィールド(以下、福島RTF)」の全面オープンなど、新たな産業基盤の構築に向け、浜通り地域は大きな変革期を迎えています。

ロボットやドローン、医療、環境、航空宇宙といった福島イノベ構想が掲げる先端産業を推進していくためには、東京などに流出してしまう人材の獲得が重要です。地元にも魅力的なイノベーション企業があることを紹介するとで、地元への就職を促したいという狙いもあり、今回のツアーが企画されました。

会津大学は、1993年、日本最初のコンピュータ理工学専門の大学として開校。「ICT(情報通信技術)」、「英語教育」、「国際交流」に力を入れ、「THE世界大学ランキング2021」(※1)の日本版では、14位にランキング。海外からの留学生や、ベンチャー企業を立ち上げる学生も多く、近年、注目を集める大学の一つです。

1年生から4年生、院生が参加。
香港や中国などの留学生も在籍し、国際色豊か

「ロボット技術のこと、就職先にどのような企業があるかを知りたくてツアーに参加しました」。コンピュータ理工学部2年生の中村諒叶さん(写真左)
「3年次の研究室を決めるきっかけになればと思って参加。また、自分の世界観を広げたいという思いもありました」。同じく2年生の皆神奏太さん(同右)

最初に、福島イノベ構想は、浜通り地域の「新産業の創出」「雇用の回復」「復興再生」を目指す国家プロジェクトであることを説明。スタートアップ企業や企業家、地域企業をサポートし続けた結果、一般に知られている企業とはひと味違う、ユニークな企業が浜通りに地域に集積しつつあります。

福島イノベーション・コースト構想推進機構 産業連携支援課課長、遠藤敦さんによるイントロダクション

福島RTFの研究棟には22の研究室があり、全国から集まった大学や企業などが入居しています。福島RTFのさまざまな実験施設を使い、ドローンによる輸血用血液の輸送実験、水中ROV(水中ドローン)の操作訓練など、これまで195の活用事例が行われ、地域一帯で新しい産業が生まれつつあると言います。イントロダクションが終わると、福島RTFの施設見学に向かいます。

研究棟の屋上から敷地を一望。
試験用プラントの向こうに太平洋が見える

無人航空機エリアを一望する統合管制室。ドローンなどの飛行計画や空域情報を管理

自律制御システム研究所(ACSL)製の軽量ドローンに興味津々

研究棟には会津大学の研究センターがあり、産学連携でさまざまな実験が進められています。現在開発中のベルト走行式の災害対応ロボットが披露され、カメラやセンサーを搭載したロボットが自律的に移動できるようソフトウェア開発や研究内容が説明されました。

会津大学 コンピュータ理工学部 准教授 中村啓太さん

最新技術のデモンストレーションに夢中になる学生たち

午後からは、参加企業によるデモンストレーションが行われました。最初は、福島RTFにも開発拠点を置き、生体信号を利用した医療機器やアバターロボットなどの研究開発・事業化を行う「株式会社メルティンMMI」。センサーの上で動かした手に連動し、ロボットアームが動きます。

指や腕を動かすと、ロボットアームがスムーズに追従。
指の動きもなめらか

株式会社メルティンMMI CFO/執行役員財務担当 大池良太さん。「サイボーグ技術とは、人と機械を融合させ、人類の新たな可能性を開くテクノロジーです」

同社独自のワイヤー駆動技術、18,900キロメートル離れたアブダビ・ボストン間の遠隔操作システムに成功したリアルタイム性など、技術力の高さをアピール。特殊環境向けアバターロボット(人型遠隔操作ロボット)は、放射線環境にある原子力発電所や宇宙、災害対応、建設現場など、多岐にわたる場所で活躍が想定されています。

世界最高のロボット技術に学生からの質問も尽きない

続いてのプレゼンテーションは、京都の西陣織工場にルーツを持つ「ミツフジ株式会社」。銀めっき繊維「AGposs」の導電性に着目し、最先端のウェアラブルIoT技術を融合した製品の開発・製造・販売を行う、世界唯一のウェアラブルIoTトータルソリューション企業です。

ミツフジ株式会社 執行役員 医療プロジェクト部長である小副川博通さん。手に持っているのが銀めっきされた導電性繊維「AGposs」。その横には生態情報を取得できるシャツを展示

サンプルを手に取り、何度も感触を確かめる

2018年9月には、福島県の復興に貢献するため川俣町に工場を建設し、生態情報を計測できるウェアラブル端末、スマートウェアを生産。2019年2月からは川俣町民にも協力してもらい、ウェアラブル端末を使って心拍やストレス度などの生態情報をリアルタイムに把握する健康管理の実証実験が行われています。今後は、医療機関や介護施設との連携、生態情報の変化を検知するAIシステムの開発を進め、実用化を目指します。

最後に、川俣町にある工場のそばに、産官学連携で「健康」「食」「スポーツ」などの新たな技術や産業の創出を目指す「福島イノベーションビレッジ構想」を紹介。社会課題や地域課題の解決に取り組む、これからの企業の在り方を語ってくださりました。

こちらの記事もおすすめ
「世界を見据えた健康改革。ウェアラブルIoTを川俣町から発信」
https://www.fipo.or.jp/htc/vision/vol08.html

電車や信号機などの制御システム、流通サービス、インフラセキュリティといったさまざまな産業においてシステム開発やソフト開発を行う「東日本計算センター」。近年では、研究開発センターを設置し、ロボットやドローン関連分野にも積極的に関わっています。

また、同社の創業の地である福島県いわき市に、廃校になった小学校を活用した「ながとイノベーションセンター」を開設。ドローンやIoTなどの次世代技術の研究開発、実証実験が進められています。

株式会社東日本計算センター 管理部・ゼネラルマネージャーである田中弘さん(写真左)
R&Dセンター・執行役員 R&Dセンター長の中野修三さん(同右)

屋外に移動して、高高度3次元隊列飛行の
デモンストレーションを見学

ゲームのコントローラを使うことで、誰でも簡単に操作できる

相互にぶつからない飛行経路を生成し、機体を制御するシステムを開発。2019年2月には、高度100メートルで、27機の隊列飛行に成功しました。2020年3月には、高高度1200メートルで8機の3次元隊列飛行を達成。今後は、同技術を活用し、気象観測や災害現場の対応、エンターテインメントなどの事業化を目指します。

福島イノベ構想をきっかけに、会津大学と共同でロボットの研究・技術開発をする同社。画像処理、映像認識・検索システムなど、産学連携でロボットソフト開発分野にも積極的にチャレンジすることで、福島のロボット産業の発展に貢献したいと語るスタッフの話を学生たちは熱心に聴き入っていました。

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【福島から世界へ】株式会社東日本計算センター紹介映像
https://www.youtube.com/watch?v=GVn4siArdEY

株式会社メルティンMMIの大池さんと、採用担当の足立奈菜子さんを囲む学生たち

イベントの最後には、3社と学生が輪になって座談会を開催。なごやかな雰囲気の中、各企業担当者へ積極的に質問を投げかける姿が印象的でした。専門知識や技術を持つ若い人材が地元で活躍することが、福島の復興につながっていくはずです。